分科会1 : 被朝鮮半島の平和と非核化の進展 北東アジアの核なき未来

いま南北会談と米哨命数啖の進展に世界の 関心が高 まっています。
朝蝉半島の完全非核化をめぐる問題点と課 雌を雄篇するとともに、日本を含む北東 ア ジアの平和と安全について話し合います。

コーディネーター:

梅 林 宏 道(NPO法人 ピースデポ特別顧問)
広瀬 訓(長崎大学RECNAセンター長)

 第1分科会においては、現在激しく状況が変化している朝鮮半島の核を巡る情勢と今後の見通 し、望ましい関与の在り方について、7人のパネリストからの報告ならびにフロアとの質疑応答 が行われました。
 1年前に比べ、朝鮮半島情勢、特に北朝鮮の姿勢と南北関係および米朝関係には劇的な変化が あり、情勢は一気に好転しているかのように見える一面もあるものの、具体的な進展という点で はまだほとんど成果が挙がっておらず、情勢を慎重に見極める必要があるという点では、多くの パネリストの意見が一致しました。しかし、北朝鮮が方針を大きく転換し、米朝が首脳会談を開 始したということは、状況を改善し、朝鮮半島の非核化を進めるための好機であるという点でも、 パネリストの意見はほぼ一致しました。
 今後の見通しについては、朝鮮半島の非核化は「成功は困難で失敗はたやすい」というパネリ ストのコメントが示すように多くの要因が絡み合っており、慎重に一つ一つの具体的な問題に取 り組んでいかなければならず、短期間で実現できるものではなく、また、早期に結果を求めれば、 かえって失敗する可能性が高いという意見が多く見られました。何人かのパネリストからは、現 在の変化のスピードは速過ぎるのではないかという懸念も示されました。しかし同時に、アメリ カのトランプ政権が盤石とは言い難い状況で、北朝鮮の核問題の解決に積極的なトランプ大統領 との交渉を急いでいるという状況はやむを得ないとの指摘もありました。
 北朝鮮の姿勢の変化については、北朝鮮の安全保障と体制の維持という基本姿勢は一貫して変 化しておらず、むしろアメリカの対北朝鮮政策の変化に対応して具体的な政策が変化したように 見えるだけで、本当に変化したのはアメリカおよび韓国の政策であるという指摘もありました。 この点から、北朝鮮は自国の安全の確保と体制の維持のために多くの犠牲を払って核兵器の保有 に踏み切ったのであり、それを容易に放棄するとは考えられず、北朝鮮の非核化が短期間で実現 する可能性はないのではないかという疑問もパネリストから提起されました。しかし同時に、時 間はかかるかもしれないが、自国の安全と体制の維持が核兵器なしでも確保できると北朝鮮が納 得すれば、北朝鮮の一貫した目的は達成できることになるので、北朝鮮の非核化は状況の進展次 第で可能だという意見も多く出されました。
 今後の朝鮮半島の非核化へ向けては、やはりギブ・アンド・テイクの関係を構築していくこと が重要であり、アメリカが一方的に北朝鮮に核の放棄を迫るのではなく、北朝鮮が核兵器関連施 設やミサイル関連施設の閉鎖・解体を進めたならば、北朝鮮に対する経済制裁を部分的に解除す るなど、北朝鮮の行動に見合った具体的な対応を国際社会が取る必要性が指摘されました。北朝 鮮への対応に関しては、現在のところ、韓国の文政権が極めて積極的であり、日米韓の間での連 携と協議が後手に回っている感があり、特に韓国の動きをアメリカが必ずしも全面的に肯定して いるわけではないことが懸念材料として挙げられるとの指摘もありました。  朝鮮半島における南北間の戦争状態の終了は南北間の問題であり、南北両陣営の合意により解 決することも可能であるかもしれないが、朝鮮半島の非核化と安定は東アジア全体、あるいは世 界に影響する問題であり、国際的な対応が必要であるとの点でもパネリストの見解は一致しまし た。その一つの提案として、RECNA(長崎大学核兵器廃絶研究センター)が創設以来取り組ん できた北東アジア非核兵器地帯構想が紹介されました。朝鮮半島の問題を解決するためには、関 係国の合意だけではなく、非核化や平和と安定を維持するための制度化が不可欠であり、現在の 北東アジアに欠如している何らかの平和と協力のための地域的なメカニズムを創設する必要性が 指摘され、非核地帯の設置はその中核となるという提案がありました。非核化を保証するための 国際的な検証制度の実施や、信頼醸成を進めるための交渉の継続のためには、やはり常設的なメ カニズムが重要であるとの見解も示されました。
 今後の交渉の進め方については、南北関係の改善のみが突出すれば、かえってアメリカの懸念 が増す可能性もあり、また、中国は中朝関係および米中関係の間で板挟みになる可能性もあり、 逆にモンゴルのように非核地位を持つ地域の国が仲介役を務める可能性もあることから、できる 限り多国間での交渉の形態を中心に進めることが望ましいとの見解が多くのパネリストから提示 されました。
 そして最後に日本の関与として、ここまでの急激な情勢の変化において日本がやや蚊帳の外に 置かれてしまったという印象があるものの、やはり日本は地域において重要なプレーヤーであり、 アメリカに追随するだけではなく、地域の軍縮と安全保障に関し独自の政策を打ち出すことで リーダーシップを発揮してもよいのではないかという指摘も出されました。また、北東アジア非 核兵器地帯が創設され、そこに日本が加われば、日本にもアメリカ軍の核兵器が配備されないと いう保証が成立し、北朝鮮の非核化を進める上でより説得力が増すという意見も出されました。
 まとめるならば、今年に入ってからの急激な状況の変化の中で朝鮮半島情勢が転機を迎えてい ることは間違いなく、非核化を通して地域の平和と安定の実現を求める好機であるとは言えるも のの、そのためにはまだ多くの克服すべき困難が残っており、慎重かつ積極的に全ての関係国が 協調して取り組むべきであるとの方向を示されたと言えるでしょう。  以上で第1分科会の報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。