分科会 1
分科会1 「核の傘」を考える 〜核兵器に依存する非核保有国の責任〜


コーディネーター 梅林 宏道

コーディネーターレギナハーゲン
私はレギナ・ハーゲンで、ドイツからまいりました。梅林宏道ピースデポ特別顧問とご一緒に、分科会1「『核の傘』を考える−核兵器に依存する非核保有国の責任−」という分科会のコーディネートをさせていただきました。
 分科会1のトピックは「核の傘」でした。この中で、私達は、核兵器依存国が核軍縮に対して、それを増強させるのか、もしくは弱体化させるのかということについて話し合いました。

パネリスト ヘンリック・サランダー

  スウェーデンのヘンリック・サランダー大使は、核の安全保障に関する核の拡大抑止の定義についてお話をされました。すなわち、NATOの同盟国、日本、韓国、そして諸外国に対して、米国により広げられている「核の傘」についてであります。
 さて、「核の傘」が信頼性を持つには、二つの要素が要ります。技術的なもの、すなわちハードの部分と政治的な部分です。まだ疑問として残っているのは、拡大抑止がどのような脅威を意味するのか、それは核の攻撃に対してのみなのか?それとも生物兵器、通常兵器に対しての脅威でもあるのかということです。このパネルディスカッションの中で同意を得たことは、「核の傘」が存在することにより、多くの国々が自分たちの核兵器能力の開発をしなかった、そして、結果として核兵器保有国の数を制限することに役だったということであります。
 しかし、これには欠点があります。「核の傘」対して、国が安全保障に過度に依存することにより、米国は、自分たちの安全性や信頼性の高い核兵器を所有するための理由付けができ、核軍縮の障壁になっていることが指摘されました。
 ドイツにおいては、既に20個の核爆弾が配備されており、この取り決めは、いわゆるNATOの“戦略的概念”の中で実施されているものです。ただ、ドイツは、残りの核兵器をドイツの土地から撤退させると発表しました。少なくとも、ヨーロッパの核シェアリングをしているもう一国も、その撤退を発表しています。そして、これには、その他の諸外国も反対はしないであろうと思います。そして、この撤退は、中央及び東ヨーロッパに設けられている非核兵器地帯を拡大することになるでしょうし、米露の戦術核兵器交渉への糸口になるのではないかと思います。

パネリスト イ・キホ
 また韓国は、公式な核のシェアリング取り決めは米国とはありませんが、実際には「核の傘」の下にあるわけです。イ・キホ氏は、韓国と東アジア、その他の諸外国との関係についてお話になりました。国家の関係、資本・通商関係、そして市民社会の関係の三つのすべての側面において、韓国は日本、中国、米国とのかかわりが一番高いと言われました。多くの多国間協定が、東アジアには存在しています。一つがGPPAC(Global Partnership for the Prevention of Armed Conflict)です。これは武装紛争予防のためのグローバル・パートナーシップです。このような形で緻密な協定を実行することによって、さらに日韓の間で非核兵器地帯を作ることができるのではないかと示唆されました。

パネリスト 中村 桂子

  また、中村桂子氏は、「核兵器国と核依存国の双方が同じような精神構造を持っている。冷戦思考のままだ。」と指摘されました。米国は大きな安全保障のジレンマに気付くべきです。すなわち一国が軍事力を拡大すればするほど、敵対国も次々に軍事力をさらに強化しようとするでしょう。ピースデボはこの何年か、「3+3」のプロポーザルを提唱してきました。北朝鮮、韓国、日本が非核兵器地帯をつくり、中国、ロシア、米国がそれを順守することに同意するというものです。そのような非核兵器地帯を創設は、交渉と協議のための高度な機関、参加国間の信頼を構築するための重要な手段を作ります。

パネリスト アラン・ウェア

  そのようなアプローチをサポートして、ニュージーランドのアラン・ウェア氏は、地球規模の安全保障のニーズを満たすための拡大抑止の概念が実行可能なのかと質問されました。アランは、バックミンスター・フラーが言った「宇宙船地球号」のイメージを用い、「地球を宇宙船と見なした場合に、その宇宙船の個々の区画を軍事的に守ることに意味があるのか?」と問いかけました。全体を守る方が理にかなっているでしょう。ニュージーランドは前向きな役割を果たした良い例です。「核の傘」に背を向け、そして軍縮を促進し、太平洋における核非核地帯協定締結や、新アジェンダ連合設立に貢献し、そして、1996年に核兵器問題を国際司法裁判所で取り上げさせるのにも一役買いました。
 アメリカ政府の軍備更新の理由として考慮された核の傘について、自国の安全保障に核の傘が必須なものではないと考えるという、同盟国からオバマ米国大統領へのシグナルがあります。

パネリスト 犬塚 直史

 この考えを取り上げ、日本の犬塚議員はこの議論へ国会議員が関わることの重要性を指摘されました。また、日本の岡田克哉外務大臣が米国のヒラリー・クリントン国務長官に書簡を送ったことは大いに歓迎すべきであり、米国の核政策の変更を支持する日本の国会議員200人により署名された書簡も、大きな影響を及ぼすことを期待すると述べました。
 一般的に、戦争のシステムを存続させるよりも、通常兵器による抑止を強化すれば、それが核兵器による抑止にとって代わり、更により高い信頼性につながるのではないかとサランダー大使が発言されました。しかし、パネリストや参加者は、それに対して疑義を呈しました。そして、戦争のシステムや軍国主義を続けるより、核兵器と通常兵器の軍縮を促進するという良い循環を作り出し、現在のような悪循環を断ち切るべきであるという意見がでました。


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