NZ軍縮大臣あいさつ
ニュージーランド軍備管理軍縮大臣
フィル・ゴフ


 核兵器廃絶−市民集会ナガサキに参加できましたことを大変嬉しく思っております。
 核兵器の恐怖を体験した都市は、長崎と広島の2つしかありません。
 1945年8月9日の長崎と8月6日の広島への原爆投下は、私たちの世界を変えました。このような行為は、ニュージーランドが長年にわたって維持してきた核兵器反対、ならびに非核政策に対する国民の支持を刺激する上で重要な役割を果たしました。
 来年はわが国にとって、非核保有というわが国の立場を実現させた法律の制定から20周年に当たります。
非核地帯・軍縮・軍備管理法は、あらゆる核兵器と原子力船の入国を禁じており、ラロトンガ条約の施行法でもあります。 この法律はニュージーランドにおいて、国民の絶大な支持を受け続けています。
 広島と長崎に対する原爆投下の恐ろしさは、長崎と広島の経験した恐怖が他の都市や地域を決して訪れることのないようにするために、国際社会や地域で努力するというニュージーランドの約束を堅固にする上の助けともなりました。
 本日、この集会に先立ち、私は長崎の皆さんのために長崎平和公園に「Te Korowai Rangimarie − 平和のマント」という彫刻を贈呈するという栄誉を得ました。
 この彫刻はニュージーランド国民と政府から長崎の皆さんへの、友情と平和の贈り物です。原爆のせいで亡くなられた方々、そして今もなお苦しみ続けておられる方々に対する深い共感のしるしです。
 また、日本とニュージーランド両国国民が共に目指す平和な世界実現のために、熱心に取り組む人々の一致団結をも表しています。
 ニュージーランドと日本は、1994年、核兵器が合法的か否かを検討することを国連総会が国際司法裁判所(ICJ)に求めた際の最も強力な発言者に数えられています。
 この姿勢は、1973年、大気圏内核実験に終止符を打つことを求めてニュージーランドがICJに対して行った訴えを土台とするものでした。
 1996年、国際司法裁判所は、核兵器の威嚇または使用は一般的に違法であるとする歴史的裁定を行いました。同裁判所はさらに、「厳格かつ有効な国際的管理のもと、あらゆる面で核軍縮に至らせる交渉を、誠意をもって追及し完結させる」義務が存在するとも述べました。
 北朝鮮における最近の出来事を背景に、この目標は現在いっそう重要になっています。核実験の実施という北朝鮮の行為は、私たち、アジア太平洋地域にとってはきわめて現実的な脅威なのです。
 ニュージーランドは日本および国際社会の他のメンバーと共に、平壌政府の挑発的かつ危険な行為を無条件に非難します。
 こうした行為は、国際社会に安全およびその他の保証を求める国家としての振る舞いと相容れるものではありません。また、核実験を通じて国際社会から妥協を得ようとする北朝鮮の試みは、最終的に逆効果をもたらすものであると私たちは確信しています。
 北朝鮮の挑発的行為に対して最近安全保障理事会が ― 安全保障理事会決議1718の全会一致での採択を通じて ― 示した強い反応は、国際社会の懸念についての明確なメッセージとなりました。
 同決議が北朝鮮に対して命ずる制裁は、国際社会の懸念を北朝鮮政府に対して― ただし北朝鮮国民に対しては悪影響が及ばないようなやり方でなされることを私たちは望んでおりますが ― 明確にするものです。
 私たちは、決議1718がニュージーランドに及ぼす影響を調査中ですが、所定の制裁およびその他の施策を迅速に実施するよう努力します。
 ニュージーランドは北朝鮮との二国間協議において、自制を示すよう同国に促し、先に締結した協定を実施に移すよう平壌政府に呼びかけてきました。私たちは地域のパートナーたちと共に、北朝鮮の核計画と弾道兵器計画の投げかける脅威に一丸となって対処するための有効な協力方法について、活発に議論を行ってきました。ニュージーランドはこの件に関して、地域の平和と安全保障を間違いなく維持しつつ現在の危機を解決するための唯一の手段とは交渉のテーブルであることを確信しています。
 私たちは、前提条件なしで6ヵ国協議に復帰するようにという、国連安保理から北朝鮮への呼びかけを全面的に支持します。協議は、解決策を見出していく上で不可欠な要素であり、私たちはこのプロセスに再度取り組むことを協議の全メンバーに促します。
 北朝鮮の行為は、日本の安全保障にとって重大な脅威となります。北朝鮮の挑発に対して平和的な外交努力を行うことを重視する日本の冷静なアプローチは、これまでも重要なものでした。
 安部総理が、北朝鮮の最近の行動に対して独自の核兵器保有計画で対応しようとは考えていないことを早い段階で明言したのは、心強いことです。
 今後数日間に、私は日本および韓国で私と同様の職務に就く人々とこの重大な脅威について話し合いますが、それには、北朝鮮を6ヵ国協議に復帰させるための協力方法についての話し合いも含まれています。
 日本とニュージーランド、そして国際社会は、北朝鮮政権が自らの行動の重大性について思い違いをしないようにしなければなりません。
 北朝鮮の行動は、さらに大きな疑問を提起します。それは、同国の核実験はアジア太平洋地域、および国際社会の長期的な安全保障にどのような影響を及ぼすのだろうか、ということです。
 私たちは新たな核兵器開発競争の瀬戸際にいるのでしょうか?北朝鮮の挑発的行動は、他の諸国が核兵器を入手したり維持したりすることへとつながる可能性があると主張する人々がいます。この懸念を軽々しく考えることはできません。
 カーネギー国際平和基金のジョージ・パーコビッチ氏は最近、「今や、核兵器の更なる拡散と使用を阻止するために、先見性があり、協調的かつ賢明な政策を定めるべき時が来た」と述べました。
 私はこの意見に全面的に賛同し、核拡散防止条約(NPT)に立ち返っています。核軍縮の義務には、久しい以前から異論の余地はありません。このことは2000年に、NPTの全締約国によって再確認されました。
 NPTは核軍縮努力の礎(いしずえ)であり、核兵器保有国が核軍縮に取り組む、唯一の多国間条約です。
 NPTとその基本原則に対する支持は今やかつてないほどの重要性を帯びています。核拡散防止は、国際社会にとって重要な優先課題であり続けなければなりません。
 ただし私たちは、核拡散防止の重視が核軍縮を目指す運動を損なわないことも保証しなければなりません。
 核軍縮と核拡散防止は、互いに補強しあうプロセスであり、コインの両面なのです。また両者共にNPTの基本的駆け引きの一部をなしているのです。
 ニュージーランドはこの2つの目標の両方を目指す取り組みに、積極的に関わっています。私たちは、「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」に貢献しています。
 私たちは、米国の主導する「拡散に対する安全保障構想」にも積極的に参加しています。核軍縮への信頼醸成に貢献するため、核兵器保有国と非保有国が一様にできることはたくさんあります。
 最近のようなできごとはあっても、包括的核実験禁止条約は反核実験の国際的規範を創り出しましたし、将来における核兵器開発を防いでくれます。その発効こそが緊急課題なのです。
 ニュージーランドは多国間協調主義の強力な支持者として、国連では何を実現し得るかということに重きを置いています。
 私たちは、2005年の主要国首脳会議において軍縮への言及が皆無であったことに失望しましたが、このことは、軍縮という目標への主体的取り組みを全世界的に実現することの難しさを公に例証するものでした。
 このことはさらに、私たちのような国々が核拡散防止と軍縮という目標を進める際に直面する課題を明らかに示すものでもありました。
 将来に目を向けると、核軍縮という課題を前に進める次の機会は、2007年の4月から5月にかけて開催が予定されているNPTの第1回準備委員会です。
 昨年5月に開かれたNPTの運用検討会議から成果が得られなかったのには、がっかりさせられました。次の検討サイクルで、核軍縮という課題を軌道に引き戻すことが一層重要です。
 こうしたいくつかの課題を前にすると、これらの目標が現実的であるかどうか ― あるいは、これらの目標は、他にも数多くの優先課題があるのに私たちが重視し続け、努力を続けるだけの価値があるのか ― と問いたい気持ちに駆られます。
 その答は、常に「イエス」でなければなりません。そして、こうした疑念に直面した時にはいつでも、1945年に長崎と広島で私たちが見舞われた恐怖を思い出すことに専念しなければなりません。
 こうした悲劇的なできごと ― そして核による絶滅の脅威が残っているという事実 ― が起きればこそ、私たちは核軍縮が困難な課題として手つかずのまま放置されることを決して認めてはならないのです。 日本とニュージーランドは、このようなことが決して起きないようにするために、今後も協力を続けていかなければなりません。
 非核兵器地帯は、国際社会に大量破壊兵器に対する拒否を明示する強力なシンボルとしての役割を果たし、地域レベルにおいてとりわけ有益です。 ニュージーランドは、南太平洋非核兵器地帯の一部であり、私たちは南半球非核兵器地帯を強力に支持しています。

 政府は単独で多くのことができますが、独力で核軍縮を成就することはできません。市民団体には、果たすべき重要な役割があるのです。皆さまのなさっている仕事は、核軍縮構想に対する支持およびこの構想のもつ機運を盛り上げるものであり、諸政府に行動を促すことができます。[実例をはさむことができますか?]
 ニュージーランド政府は、軍縮という領域における市民団体の努力をサポートしています。私たちは、軍縮に関するNGOと市民団体が唱導する構想に資金を提供しています。私たちは、軍縮教育を優先課題と考えています。一般大衆 ― 特に若い人々― の間で、核兵器の脅威についての意識を向上させることが不可欠です。
 広島と長崎から60年以上も経た今、北朝鮮は、核による絶滅という亡霊が闇の中へと退場したわけではないことを私たちに気づかせました。核兵器が人間に対して投げかける脅威を国際社会が甘んじて受け入れるようになってしまわないことが、これまで以上に重要になっています。
 長崎と広島の平和公園は、核兵器が人間に恐ろしい苦しみを与え得ることを痛烈に思い出させる場所です。ニュージーランドは今後も核兵器の脅威のない世界を目指して前向きな努力を続けてまいります。
 皆さまが私たちと熱意を同じくされていることを私は知っています。そして、ここで皆さまのたゆまぬ献身に感謝申し上げます。
 ドウモアリガトウゴザイマス。ご清聴ありがとうございました。

 

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