NGO代表スピーチ

ブルー・バナー所長(モンゴル)

J. エンフサイハン博士
議長

〔訳注:Mr. President〕
組織委員会委員長〔訳注:Mr. Chairman of the Organizing Committee〕

平和活動に従事する皆様、 そしてご来場の皆様、 この権威ある集会に、モンゴルにおける平和活動を代表して参加できることを非常に名誉に思います。本集会は、期待はずれに終わった2005年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の後、核の危険の減少と核兵器廃絶に関する多角的交渉の停滞しているときに開催されるものであります。核不拡散体制の弱体化は深刻な事態となっております。しかし、平和運動やこのような集会のおかげで、核兵器は我々が受け入れることのできる「必要悪」ではなく「絶対悪」である、という認識は広がってきております。このような現状の下、本集会がこれらの問題をあらゆる角度から取り上げ、各国政府、国連および国際社会全体に向けて明解かつ具体的なメッセージや提言を発することは、非常に時宜を得たことであると考えます。

不拡散体制の強化が喫緊の課題である、という点については誰もが確信しているところでありますが、これは公認の核保有国(P5)の政策に大きく影響されます。従って本集会の発するメッセージは、核保有に野心的な国だけではなく、これらの〔核保有〕国をまず対象としたものでなくてはなりません。

一方で核不拡散の進展が、人類の圧倒的大半を占める非核兵器国(NNWS)自体に大きく依存している分野もあります。軍縮交渉が膠着しており、核不拡散体制の解体の危機が増大しているなか、NNWSの役割は縮小するのではなく、むしろ重要性を増しつつあります。このような分野の一つに、非核地帯(NWFZ)を挙げることができます。NWFZとは何でしょうか。今日、115の非核兵器国(NNWS)が、核兵器やそのインフラの存在を許さない国々からなる巨大なネットワークを構成しています。このネットワーク〔の参加国〕は国連加盟国の3分の2を超えており、その〔領土内には〕ほぼ20億人が居住しております。その合計面積は地球のほぼ50%をカバーしており、南半球の95%を占めております。この非核地帯(NWFZ)のネットワークを統合し、さらに拡大していくことで、非常に大きな影響力を発揮することができるのです。

ですから本集会の主催者が、NWFZと核の傘〔の問題〕に焦点をあてるよう手はずを整えて下さったことを称賛したいと思います。〔この問題について〕具体的な提言を行うことで、不拡散体制の強化と、核軍縮の促進に効果的な貢献を行うことが可能となるのです。

モンゴルのNGOであるブルー・バナーは、核不拡散〔に関する活動に〕熱心に取り組んでおり、NWFZは現在まで果たしてきたよりもずっと積極的な役割を担うことができるはずだ、と考えています。これらの地帯は核兵器の取得を拒絶し、自国領土内にそのような兵器を配置することを禁止し「核の傘」を拒絶することによって、核保有国に対し核軍縮への具体的な処置をとるよう要求する権利を、法的のみならず倫理的にも獲得したのであり、したがって非常に重要かつ建設的な役割を果たすことが可能なのです。NWFZに参加している国々は、これまでの成果の強化や拡大のための積極的な対策をとるだけではなく、NWFZの代表として核軍縮のために声をあげ行動していくべき時がきた、と私たちは考えています。

NWFZを一致団結させ、さらに拡大していくためにはどうするべきでしょうか。

NWFZが必要としている統合とは:

" これらの地帯に含まれるすべての国が、NWFZの設立協定に調印、またはこれらを批准しているわけではありません。このようにしてアフリカのNWFZを設立する協定の採択からは10年間がたちましたが、未だ発効していないのです。アフリカ諸国が批准することについては、P5とは関係がありません。
" バンコク条約として知られる東南アジアのNWFZは、必要としているP5による安全の保証を未だ得ていません。これらの国々は、P5各国とともにより一層努力を行い、相互に受け入れ可能な解決策を見つける必要があります。この件に関するイニシアチブがP5の側からくることは期待できません。
" 中央アジアのNWFZ条約は先月調印されました。これは陸地部分を完全にカバーしている初めての地帯であり、今後地理的に拡大していく可能性もあります。条約の批准手続きとP5による核に関する安全の保証がまもなく行われることを、私たちは心から願っています。
" 各地帯内における国同士の有意義な協力や、5つの地帯間の協力は、核不拡散の実践において効果を持ち得ます。より多くの実用的な情報交換を行い、条約の履行や〔条約を〕強化していくうえでの経験、また検証にあたっての経験を共有し、コンプライアンス・メカニズムを改善し、ネットワークのさらなる強化のための全体的なイニシアチブに着手し、核安全保障と軍縮に関する共同声明を発表し、原子力の平和利用に関する共同措置または同時並行措置をとることなどが可能なのです。NWFZ間のこのような協力に向けた最初の一歩は、昨年メキシコ・シティで各地帯の参加国が互いの協力を深め、将来の協力における調整メカニズムとして各NWFZにフォーカルポイントを設けることに合意したときに踏み出されました。これを実際にフォローアップしていくために、さらに実効力のある措置をとることが現在必要とされています。

NWFZは、更に拡大していく必要があります。

" 地球上のこれも広大な地域から核兵器を締め出すことになる、第二世代のNWFZを追加的に設立する必要があります。しかし設立が「より容易であった」既存の地帯と異なり、新たな地帯〔の設立〕はP5の利害や既存の戦略的体制のバランス構造により大きな影響を与えることになります。これは場合によっては、NNWS内部の核兵器インフラを解体し、「核の傘」、核の共有、そして核ドクトリンの問題に対処していくことを意味します。したがってこれにはより革新的、創造的なアプローチが必要となります。理想とするところは、世界全体から核兵器が消えることです。これは世界中の人々によって要求されていることであり、核兵器の禁止、廃絶についてのモデル条約の草案においても想定されています。しかし、完全な核武装解除が達成されるまでの間、地理的な地域や個々の国は、新たに信頼できるNWFZを設立していく必要があります。これは特に中東、北東アジア、中欧および南アジアについていえることです。
" 地政学的にモンゴルが関係のある北東アジア地域(NEA)においては、朝鮮半島の非軍事化が地域的なNWFZを設置するうえでの必須条件となります。これには米国の傘の引き上げ、その他のデリケートな問題への対処が必要となります。六カ国協議は朝鮮半島の非核化問題を取り上げていますが、これを完全に実施するには北東アジアのNWFZを確立し、核兵器および核施設を撤廃し、核の傘を放棄し、必要かつ十分な安全を保証し、強固な査察メカニズムを打ち立てるほかにはありません。第二世代のNWFZを設立するための革新的かつ柔軟なアプローチが必要となります。
" 更なる拡大とはまた、個々の国々をNWFZのネットワークに組み込むことをも意味します。主にアジアおよび欧州地域において、12を超える国が従来の意味での地域帯の一部をなすことができない状況にあります。これらの国々が取り残されたり、差別されるようなことがあってはなりません。まさにこの理由のために、モンゴルは個々の国〔での参加〕、つまり地理的または地政学的な理由のために地域のNWFZの一部をなすことができない国が、一国で国際的に認知された単一国家地帯を形成することができるようにするための取り組みを行っているのであります。数が多いほどより安全であるといわれます。個々の国は、地理的、政治的なグループを形成している各国に比べて核についての安全の保証をより必要としています。誰も目をくれない「死角」をつくってはなりません。これら個々の国は核計画に参加して、核攻撃や圧力の対象になりたいとは考えておりません。一方でこれらの「死角」が安全な状態にあることは、地域の安定、予測可能性、そして地域的安全保障に貢献することになるのです。
" 私の国について申し上げれば、モンゴルは最後のソ連/ロシアの軍隊が国を去った1992年に、その領土をNWFZであると宣言しました。そして過去14年間、国連が歓迎し、また認めている「核兵器のない状態」を保ち続けてくることができました。2000年の2月には、モンゴルは同国一カ国をNWFSと規定する国内法を採択し、同年10月にはP5からの政治的な安全の保証を得ることができました。現在モンゴルは、この地位を国際的に制度化し、自国を最初の単一国でのNWFZとするための動きに取り組んでいます。

国連、それどころか国際社会全体が、相互依存の度合いを増す今日の世界において、市民による社会運動が担っている、また担うことのできる役割の重要性については認識しています。国際刑事裁判所を求めるNGO連合や、地雷禁止国際キャンペーンの例、つまり熱意を持つ市民社会が、関心を持つ政府と積極的に協力している例には勇気付けられるだけではなく、これらは非核兵器国と市民社会組織に力を与え、また彼らのパートナーである政府の重要性を増大させるものともなりうるのです。このような協力は、地域的な規模(たとえば北東アジア規模)でも、地球全体規模でも効果を持ちえます。ですから、そのような協力体制の確立に向けて動きだそうではありませんか。国連に関して言えば、30年を超える時間がたった後、NWFZの現状、またNWFZが不拡散および核軍縮に対し今後の10年間に行うことのできる貢献についての、専門家による研究に着手することができました。

ブルー・バナーは、NWFZには非常に大きな可能性があると考えています。私たちはナガサキ集会が、この大きな可能性を引き出し、効果的な協力体制を構築して不拡散体制の強化と現実の核軍縮に実際に貢献していくうえで、重要かつ画期的な出来事となることを願っております。

 

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