長崎県知事あいさつ
長崎県知事
金子 原二郎

 「第3回核兵器廃絶−地球市民集会ナガサキ」の開催にあたり、長崎県民を代表いたしまして本集会のご盛会をお慶び申し上げますとともに、ニュージーランド軍備管理軍縮大臣のフィル・ゴフ様をはじめ、国内外からご参加いただきました皆様のご来県を心から歓迎申し上げます。
 61年前の8月9日、長崎に投下された一発の原子爆弾は、多くの尊い人命と、美しい長崎の街並みを一瞬のうちに奪い、有害な放射能と、被爆者への拭いがたい恐怖、深い悲しみを残しました。
 その後、県民の懸命な努力により、長崎の街は美しさと活気を取り戻すことができましたが、半世紀以上経った今もなお、多くの被爆者の方々が健康障害などに苦しんでおられます。
 私たちは、このような核兵器がもたらす被害の悲惨な実状を、全世界、そして後世に語り伝えていくことは、被爆体験を有する長崎県民の重大な責務であると決意し、これまでも「長崎の惨禍を二度と繰り返すな、長崎を最後の被爆地に」と、あらゆる機会を通して訴えてまいりました。
 長崎県では、毎年8月9日を「県民祈りの日」と定め、原爆犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、県民の核兵器廃絶に向けた決意を新たにする日として、学校等におきましても、次世代を担う若者たちに平和を希求する長崎の精神を託すため、平和について考える学習の実施など、様々な取り組みを行っております。
 また、世界各地においても、NGOの皆様をはじめとする方々により懸命な平和創造への取り組みが行われており、2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で「核保有国による核兵器廃絶への明確な約束」を盛り込んだ最終文書が採択されるなど、核兵器廃絶を願う声は、一歩一歩、着実に広がってきております。
 しかしながら、その後も、核保有国による臨界前核実験が繰り返され、昨年開催されたNPT再検討会議においては、核兵器保有国と非保有国との意見の対立から、大きな進展もなく閉幕するなど、核兵器廃絶への具体的な方策が見いだされるには至っておりません。
 加えて、去る10月9日には、北朝鮮政府が核実験を実施したところであり、日本政府をはじめ、世界各国が強く核実験の中止を求める中、これを強行したとすれば、国際的な核不拡散の合意を踏みにじる重大な事態であり、断じて許すことができません。
 人間が作り出した核兵器は、私たち、人間の力でなくすしかありません。そのためには、世界の人々が、国境、宗教の枠を超え、同じ地球で暮らす「地球市民」であることを再認識し、一体となって、この美しい地球を次世代へと受け継いでいくよう努力していかなければなりません。
 本日の集会では、どうか、活発な意見交換を行っていただき、被爆地長崎から世界へ向け、核兵器廃絶の強いメッセージを発信していただきたいと存じます。そして皆様のアピールが、国際世論を喚起し、核兵器廃絶、恒久平和実現のための新たな原動力になることを期待いたしております。
 また、県外からお越しの皆様におかれましては、長崎へ来られた折角の機会でございますので、被爆遺構や平和関連施設はもとより、県内各地へも足を延ばしていただき、長崎ならではの歴史や文化にも触れていただければ幸いです。
 終わりに、この「地球市民集会ナガサキ」が、核兵器廃絶のための大きな成果と確かな一歩を築くことを祈念いたしますとともに、ご参加された多くの皆様、そして開催にご尽力いただきました実行委員会をはじめとする関係者の方々に心からお礼を申し上げ、歓迎のごあいさつといたします。


 

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