NGO代表スピーチ 1
 田上市長、土山氏、そして長崎市民の皆さまに、この市民集会を開催していただいたこと、そして、昨年の4月にプラハでオバマ大統領が呼び掛けた「核兵器のない世界の平和と安全保障」を築く方法に関する私たちの考えと戦略を世界中から集まった核廃絶論者の方々が共有できるようにして下さったことに感謝いたします。伊藤一長市長の悲劇的な暗殺以降、初めて長崎に戻ってきたので、核軍縮の素晴らしい擁護者でおられた偉大な伊藤市長の冥福を祈りたいと思います。市長は私たちの平和運動にはなくてはならない存在でしたし、個人的には私も、もうお会いできないことを寂しく思い、深い悲しみを感じております。
 この最初のスライドでは、政府高官によって先日おこなわれた3つの発言を見ていただくことができます。
 最初の発言者はデズ・ブラウン議員/英国防相です。「英国は核兵器のない世界に向けたビジョンを有し、その望みを共有する全ての人と連携して今後このビジョンに向けてさらに前進するつもりです」。
 2つ目は英国のゴードン・ブラウン首相の発言です。首相は、オバマ大統領の核兵器のない世界に向けた呼び掛けを公に支持しています。首相は「核保有国は、私たちも果たさなければならない責任を明確にしなければなりません」と認めています。
 3つ目は、デービット・ミリバンド英外相が一年前に始めた「核の影を除く―核兵器廃絶のための条件の創出」というタイトルの外務省報告書です。この報告書では、かつては、真剣に取り組むには余りに非現実的と考えられていた「廃絶」の問題も取り上げられています。
 しかし、報告書では、英国が意義ある取り組みを行うために、他の諸国が満たさなければならない条件が設定され、障害に最も重点が置かれていました。「全ての核兵器の地球規模での禁止を実現するには、核の抑止力に守られている(世界の人口の半数を超える)全ての人に、核兵器のない世界のほうが核兵器のある世界より大きな安全保障が得られるという自信を与えるような条件の構築が必要なのです」。
 これは3つの重要な発言ですが、現実的には、英国政府は、2007年3月に下した2050年を超えて次世代のトライデント核兵器を運ぶ新しい原子力潜水艦隊の構築に向けての自国の決断に未だしばられているのです。それでも、60%を超える英国市民がトライデントの交換に反対しており、50%以上が英国は核軍縮を牽引し、できるだけ早い段階で今あるトライデントシステムを廃棄すべきであると考えています。
 現実的には、ゴードン・ブラウン首相が提案しているのはせいぜい、英国の核弾頭を160基に、潜水艦を4隻から3隻にまで削減するというものです。それは、長崎のような都市を1,200回以上も破壊できるのに十分な爆発力を私たちが有していることを未だに意味しているのです。
 辞任後、デズ・ブラウン元英国防相は、核兵器への依存を縮小し、核軍縮を推進する取り組みにより深く取り組むようになりました。マーガレット・ベケット元外相とともに、ブラウン氏は、オバマ大統領のイニシアチブが実を結ぶようにするためのトライデント交換への決断の延期や、継続的航海による抑止(CASD)パトロールの中止などを含む英国ができるさらなる取り組みを検討するために英国議会の上下両院からの元大臣による「トップレベルグループ」を創設しました。
 最近のニュースでは、本年の総選挙での勝利が予想されている保守党は少なくともトライデントの決断を数年間は先延ばしにすることが示唆されています。これにより、私たちはトライデント計画自体を完全に破棄するよう押し進めるための時間を稼ぐことができます。おそらく保守党は、「トライデントでは国民を守ることも国を防衛することもできない(その上、英国が経済的に弱っているときに、何十億ポンドものコストが掛かる)」という私たちのメッセージに耳を傾けていたのでしょう。しかし、英国の政治家には、他の各国が核兵器の廃絶を要求してこないかぎりトライデントを中止するほどの勇気はないという兆候がはっきり表れています。
 核兵器は非合法で価値のないものにならなくてはなりません。私たちは英国及びNATOドクトリンにおいて核兵器の役割を縮小しようと懸命に取り組んでいます。それが誰の手によるものであれ、どんな理由であれ、核兵器の使用は人道に対する罪であると定めることを目指しています。ここ長崎の地では、それが真実であると皆が知っているのです。しかし、国際司法裁判所(ICJ)は曖昧な抜け穴をそのままにしているので、私たちには、わかりやすく明確に核兵器の使用を非合法化するような国際的運動が必要なのです。
 この間私たちは、他のNATO加盟諸国と共にNATOの戦略構想に取り組み、核兵器の先制使用を禁止、または、少なくとも、核兵器の唯一の目的が核攻撃を思いとどまらせることであることが確実になるよう核ドクトリンを改定しようとしています。
 この件に関しては、日米安全保障同盟において、非核化、少なくとも核抑止力の役割の縮小について米国政府と話し合いを求めるという日本の岡田克也外相のイニシアチブによって私たちは随分元気づけられています。
 また、スライドショーからわかっていただけるように、英国市民社会は核不拡散や核の安全保障の強化に向けた地球規模の取り組みに参加する一方で、トライデントの再開発に対する反対をできる限り最高潮に高めようとしています。そして核兵器禁止条約の話し合いに向けた基盤作りを行っています。核廃絶キャンペーン(CND)や草の根団体が核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に参加し、6月5日にオルダーマストンおよびファスレーンでデモを行う計画を立てています。NPT再検討会議終了後の週末に行われる核兵器廃絶国際キャンペーンが呼び掛ける国際核廃絶行動デーです。
 ファスレーン365は、2006年から2007年の一年間に渡ってスコットランドのファスレーンにある核兵器基地で行われた平和的封鎖を組織しました。団結力のある素晴らしい行動の中で、長崎、広島、ピースボートをはじめ日本中から被爆者、活動家、学生の方々が私たちの抗議行動に参加し、全ての核兵器廃絶への道を開くにはトライデントは中止すべきだという皆さんのメッセージをスコットランドに持ってこられたのです。このデモはスコットランドの労働党崩壊に寄与しました。選出された新しいスコットランド政府は、スコットランドを核のない国にする取り組みを行っていますが、スコットランド議会を築いた権限移譲合意に従えば、スコットランド内での核兵器配備を含む、ロンドンで下された防衛の決断に影響を及ばすほどの力はありません。
 私たちはスコットランドで圧力をかけ続けています。そして、1952年以降英国の全ての核兵器の設計・建設が行われてきたロンドン近郊のオルダーマストンの核兵器工場で私たちは現在取り組みを倍加させています。オルダーマストンは今、10億ポンドのスーパーコンピュータや新しいレーザー施設を含む新しい核弾頭開発のための改装が行われている最中です。先月、この核兵器工場は、新しい高濃縮ウラン取扱施設建設許可申請を出し、何千人もの地元の人々の反対を受けています。
 2月15日、トライデントに反対し英国が核兵器廃絶の中心的存在となるよう要求するために、英国全土から人々がオルダーマストンでの平和的封鎖に参加することになっています。2人のノーベル賞受賞者、4人の司教を含む英国の主な宗教指導者(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教など)、そしてあらゆる職業から多数の活動家が参加する予定です。この封鎖はトライデント・プラウシェアズ、核廃絶キャンペーン(CND)、オルダーマストン女性運動によって共同で組織されています。土山氏とこの市民集会の主催者の皆さまは、以下の連帯メッセージを発信するよう提案しています。もしこのメッセージが私たちを代表して発信されることに賛同されるなら、私が読み上げた後に拍手で応援をお願いいたします。
 「第4回核兵器廃絶―地球市民集会ナガサキ」は、オルダーマストンの英国核兵器工場での2010年2月15日のトライデント・プラウシェアズ平和的封鎖への参加者に対する支持と団結に関するメッセージを発信します。2月6日〜8日に長崎に集まり、被爆者や私たちの家族を含む、私たち日本国民及び世界市民は、あのように恐ろしく非人間的な大量破壊兵器によって再びだれも苦しめられることがないよう要求します。核兵器の使用はいかなるものも、人道に対する罪です。英国政府がトライデント核兵器を交換せずに廃棄して、国連事務総長の核軍縮計画およびオバマ大統領の「核兵器のない世界の平和と安全保障」の構築への呼びかけを支持する世界の牽引者となるよう共に要求いたします」。


アクロニム軍縮外交研究所所長(イギリス)レベッカ・ジョンソン
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