分科会報告
分科会1:非核宣言自治体フォーラム
非核宣言自治体フォーラムの活動と国際的連携の活性化


田崎 昇氏 フェリシティー・ヒル氏 アラン・ウエア氏 児玉 克哉氏 川口 龍也氏 青木 明彦氏


1 問題提起 コーディネーター 田崎 昇氏
  広島・長崎への原爆投下でわかるように、核戦争が起これば真っ先に攻撃を受けるのは都市や町であり、犠牲となるのはそこに住む一般住民です。従って住民の安全と平和を守るため、地方自治体として核戟争の防止と核兵器廃絶廃の意志を宣言したのが、非核宣言の意義であると思います。
1979年、ソ連の核ミサイルS S−20に対抗するため、アメリカとNATOはパーシング2(ツー)の西ヨーロッパ配備を決定しました。これに対しイギリス、オランダ、ドイツなど西ヨーロッパ各国で市民による反対運動が起こりました。自分たちの町が核戟争の戦場になる危険があったのです。
 このよう反核運動の流れの中でイギリスのマンチェスター市が非核都市宣言を行い、これをきっかけに非核宣言運動はイギリスから西ヨーロッパへ、そしてオーストラリア、ニュージーランド、日本にも広がりました。日本では、1980年代に宣言自治体
が飛躍的に増え、最も多い時期には宣言自治体の数は全自治体の8割を越しました。
 しかし8割という数字に見合うだけの活動が行われているのか、活動が自治体だけにと どまっていないか。3つの問題提起をします。
 第一は、非核宣言の原点に帰ろう、です。 イギリスのマンチェスター市の宣言のねらい は、核兵器反対の意志を表明すると共に、非核宣言運動をイギリス全土に広げ、核ミサイル配備の断念を政府に迫ることにありました。今日の私たちの課題は、反核平和活動を自分の自治体だけにとどまらず日本全体に広げていく事であると思います。ニュージーランドにおいては非核法を制定しています。日本の非核三原則は国会決議はされていますが、法制化はされていません。私たちの運動の重要目標として非核三原則の法制化さらには北東アジア非核兵器地帯の創設を日本政府に求めていくべきであると思います。
  二番目の問題提起は、全国の地方自治体が市町村合併や行政、財政上の問題に直面している時に、自治体、住民の平和活動をいかに進めるかです。三年前、第二回地球市民集会の非核宣言自治体フォーラムでも、この間題が話し合われました。市町村合併により、当然ながら自治体総数は減り、宣言自治体も減りました。しかしながら自治体総数に対する宣言自治体数の割合、すなわち宣言率は82%から72%に低下しました。その一方で、非核宣言自治体協議会に加盟している自治体の割合は、むしろ増加しており、これは協議会の努力の成果であると評価します。地方自治体の行政・財政的問題、職員数の削減などの問題を抱える中で、平和行政にタッチされている方々のお話が聞けたらと思います。
 三番目の課題は海外の自治体、NGOとの提携です。今回の集会は海外のNGOとの提 携のきっかけになると思います。また、海外の約1400都市が賛同している平和市長会議、その事務局は広島市にあります。日本国内の217自治体が加盟している日本非核宣言自治体協議会、その事務局は長崎市にあります。この二つの団体は既にいくつかの共同事業を実施していますが、一層の提携強化が望まれます。
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2 基調報告 コーディネーター フェリシティー・ヒル氏 核兵器廃絶国際キャンペーン
 中央政府よりも地方自治体の方が、もっと積極的に勇気を持って、それぞれの人々の 懸念事項に取り組んでいます。1977年以降、オーストラリアでは115の地方自治体が非核宣言をしました。オーストラリアでは、平和市長会議の啓発的なキャンペーンのお陰で、NGOがこれらの自治体と熱意を持って協力をしております。
 私は、現在、新しいキャンペーンに携わっています。これは、核戦争防止国際医師会議、1985年にノーベル平和賞を受賞した団体ですが、この団体のための新しいキャンペーンであり、核兵器廃絶国際キャンペーンと呼ばれています。InternationalCampaigntoAbolishNuclearWeapons略してICANと呼ばれるキャンペーンです。日本語では、ICANは「私もできる」という意味です。私たちは、この頭文字のICANという名前を使うことによって、試рスちが核廃絶が可能であるということに対する本当に強い信念と強い希望を示すことができるのではないかと思っています。

軍縮活動に必要な三つポイント、
第−のポイントー民主主義
 民主主義は、NGOが、人々の意見を表現するために必要となる概念であります。民主主義の中でも表現の自由が妨げられるということは、NGOの存在自体が危機に瀕するということです。多くの人々の世論が無視される、そして大多数の人びとの意見を代表する大きなデモが政府によって無視される、これはまさに民主主義ではないといえる例だと思います。どのような場合にしろ、核兵器をつくるという決定は民主主義ではありません。核兵器開発の決定がされたときには、内閣や議会、国民の承認もないことが往々にしてあります。
 一方、軍縮は民主的です。大多数の一般市民、そしてほとんどの政府は軍縮を望んでいます。昨年、グリーンピースがヨーロッパで世論調査を行いました。その結果、人口の80%から90%の人々が、核兵器を望まないと返答しています。そして、NATOの兵器も望まないと返答しています。私たちNGOは、ときとして非常に強い声を出して主張しなければなりませんが、この主張が一般にまだ受け入れられていない、あるいは政府に受け入れられていないことも往々にしてあります。しかし、それは、民主的な人々の意思を表現するものです。
第二のポイントー忍耐力
 思うように事が進まない、果たして前進しているのだろうかと疑問に思うときもあります。しかし実際には前進しています。冷戦時代のピーク時に6万8千発あった核兵器が、現在では2万7千発に削減されております。もちろん、新しく作られた核兵器は、旧型よりも強力なものになっております。しかし、数の上ではゼロに近い方向に進んでいます。いま、この減少の傾向が危険にさらされています。新しい軍事ドクトリンのもとに、核兵器が再評価され、新しい核兵器が開発されているからです。私たちが、一層主張を強め、引き続き核軍縮についての意見を推し進めていかない限り、核軍拡競争はまた起こり得ます。私たち医師会議の医師たちも独自の方法で、それぞれの地域の中で活動を行うことを決定しています。こうした努力を積み重ねることによって、新しい軍縮に向けた転機を迎えることができるのではないかと思います。この転機とは何か、これからお話しします。
第3のポイント一転機
 この転機とは、いろいろな考えが明白になる、そしてその考えが実現する、そしてその考えがまさに影響力を持つというような時を転機といいます。私たちは、いつ軍縮に関しこの転機を迎えることができるのでしょうか。具体的な日時を答えることは出来ませんが、私はその転機が訪れつつあることを今、感じています。この転機を感じるのは3つのことが実現した時です。指導的アクター(主体者)、つまり様々な専門分野やコミュニティから集まった人々が、この間題に取り組み始めた時です。そしてアクター(主体者)は、往々にして個人レベルで活動しますが、個人ではなくて、共同して、私たちの要求をさらに推し進めていく。そして3点目として、この軍縮問題が、人間的な言葉で理解された時、核の被害者である被爆者が目に見えるような形で理解された時です。
終わりに
 結論を申し上げますと、軍縮は避けられない、そして軍縮は起こり得るし、これから起こるであろうと思っています。現在、私たちは大量破壊の兵器を持っています。その一方で兵器の大量一括廃棄をしなければなりません。私たちは、私たちの目標として、核兵器禁止条約をつくろうと努力しております。この条約こそ私たちが目指す目標であり、軍縮の技術的プロセスを実現ならしめる法的な手段であります。
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3 パネルディスカッション
ニュージーランドにおける非核宣言運動と自治体の役割 アラン・ウエア氏
ニュージーランドにおける非核自治体宣言と 反核法
 ニュージーランドは日本と同じように長年にわたりアメリカの同盟国でした。第二次世界大戦後、アンザス条約(オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ)により軍事関係が強化されました。この軍事関係の一つとしてアメリカの原子力艦船がニュージーランドの港に入港しており(とくに1978年〜84年の入港はピークに達した)、南太平洋における核実験の影響への懸念、核戟争の可能性への憂慮が高まる中で、アメリカの原子力艦船の入港がニュージーランド人による抗議の的となりました。核戦争が起これば、原子力艦船が攻撃目標となり、同時のミュージーランドも目標になるかもしれないと恐れたのです。
 平和団体は核兵器の港への持込を禁止するよう政府に求めましたが、政府と殆どの国民 は艦船入港を支持しました。1980年、平和団体は、核兵器の危険について多くの人びとに啓発し、反核運動に対する政治的支援を強化する方法として、非核宣言自治体を全国に広げることを決定しました。最初は、非核宣言のステッカーを各家庭に貼り、自分の家を非核宣言することから始めました。次に、自分たちの職場や学校、都市の宣言を広げました。
 非核宣言の最も重要な影響は、核兵器廃絶への国家的支持を築いたことです。1978年 時点では、国民の半分以上がアメリカの核艦船入港を支持し、39%は、ニュージーランドの国防のために核兵器の使用に賛成すらしていました。しかし1984年には、58%が入港に反対し、賛成はわずか30%でした。 そして国民の66%が、非核宣言した都市に居住していました。
 このような核兵器禁止への世論を背景に、労働党は1984年の選挙運動を展開し、核艦 船入港禁止へとニュージーランドの政策を変えたのです。反核運動への支持はさらに高まりました。1986年の世論調査では、92%が核兵器のニュージーランド持込に反対、69%が核艦船入港に反対、92%が国連を通じた核軍縮推進を支持し、88%が非核宣言運動を支持しました。労働党政権は現在まで反核政策をとっていますが、国民による明確な支持が無ければ、アメリカの圧力に対抗しこのような政策を続けることは出来なかったでしょう。
 日本はニュージーランドと同じように非核宣言運動が盛んです。しかしニュージーランドではこの気運が核兵器禁止に向けたすべての主要政党による政策転換となって形に表れました。つまり、ニュージーランド非核宣言・軍縮・軍備管理法として法制化されました。日本ではこれはまだ実現されていません。日本の政党は一般的に多国間核軍縮を支持していますが法律による核兵器禁止までは支持していません。実際、いくつかの政党はアメリカの核兵器によって守られる日本の政策を支持しています。

 核軍縮議員ネットワーク日本支部の設立は、核兵器禁止を進めるための超党派による話し合いの場を提供しています。また日本非核宣言自治体協議会は核軍縮議員ネットワークと共に、核抑止力の拒否と核兵器の日本への持込禁止に向けた超党派的政策転換を働きかけることが出来ます。
いくつかの地域における非核兵器地帯の取り組み
 日本の政党を核抑止拒否に変えさせることの困難さの一つは、日本が核兵器保有又は保 有可能な隣国、中国、ロシア、北朝鮮に接しているからです。このような理由から、本日ここにご出席の平和運動家や非核宣言自治体関係者が「北東アジア非核地帯」設立の提案に関心を向けることは有意義であると思います。
  日本の非核宣言自治体はこの提案に基づき、核軍縮議員ネットワーク日本支部のような超党派的話し合いの場で、国政レベルの討議を進める上で重要な役割を果たすことが出来ます。
その他の協調行動
 2005年5月、平和市長会議と核軍縮議員ネットワークは、核兵器の無い世界の達成に向けた多国間交渉を求める市長と議員の共同アピールを発表しました。
  今年4月、日本非核宣言自治体協議会もこのアピールに賛同しました。この協議会、議員ネットワーク、平和市長会議による共同を歓迎すると共に、この共同が核軍縮への大きなインパクトにつながるものと確信します。
終わりに
 グローバル化した今日、安全保障問題はもはや、政府の特権事項ではありません。都市 が気候変化、貧困、テロリズム、核の脅威などの地球規模の問題に向かって行動を起こしています。その政治的影響力は、都市が国会議員やNGOなどの主要活動体と協調する時にさらに強化されるでしょう。この会議がこのような協働関係を発展させ効果的な軍縮戦略を進める上ですばらしい話し合いの場を提供するものと思います。
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(2)反核平和運動における自治体の役割   三重大学教授・児玉 克哉氏
新たな主役(アクター)としての自治体
 自治体が新たな平和の主体として認識 され活動しています。世界を動かすアクターは、オーソドックスな国際関係理論では、主権国家でしたが、今では国際機関や企業、国際NGO、そして地方政府など、国家以外のものにも広がっている、こういう認識が広まっています。
 グローバリゼーションという流れの中で、私たちが地域で暮らしている中に、国際的な要素がたくさん生まれてくるようになってきました。となるならば、私たちの地域自体が、国際間題に対してどうアプローチしていくのかが当然重要になってきます。このように考えながらも、自治体の国際活動や、平和活動の現状は、厳しい財政のほかに合併問題があります。合併するかしないかの方が大変で、平和とか国際的な問題はもう後に置かれてきました。これにどう対処するか私たちも考えなければなりません。しかし、これは発想の問題でもあります。10年前、15年前、まだ日本の自治体はかなり大きな予算を持っていました。その中で、国際姉妹提携などのさまざまな活動をしていました。私は、そうした活動を調査したことがあります。例えば、名古屋市とロサンゼルス市が提携をしています。名古屋市では大きな予算がついていましたが、ロサンゼルス市では予算はついてないのです。各姉妹都市の提携活動のためのNGOがあって、市役所の中に事務所を構え、そこがネットワークとなって募金をして活動しているのです。発想がもともと違っていたわけであります。
 限られた予算の中でも、自分たちの自治体が、国際社会の中のアクターとしてどういう形で加わっていくかを一緒になって考えていく、これが大きな流れであると思います。
地域活性化の可能性
 自治体が平和の活動をする、国際的な活動をするということは何なのか、これはよく聞かれます。今私たちが抱える大きな問題、平和、地球環境、南北間題などの問題にかかわっています。例えば、今、北朝鮮が核を持ったと、これは、長崎市の市内の問題ではないので長崎市は何もしなくてもいいという話ではないわけです。もし問題になったら、すぐに私たちの生活は、影響を受けます。とするならば、そこに何らかのことをしなければならないのです。
 経済開発とか社会開発、あるいは、最近は人間開発ということが言われていますが、私が最近使い出した言葉で、希望開発という言葉があります。原爆とは希望を打ち砕くものだ、希望を失わせるものである。それでは平和活動は何なのか、平和活動は、その失われた希望を取り戻す、あるいは新たにつくり出すものではないのか。私は、地域が、あるいは自治体が、国際活動にかかわっていくということは、地域が国際社会の中で起こっている変化に何もできないと思うのではなくその中で何ができるのか、私たちの生活をどう変えることができるのか、どう私たちの政府を動かすことができるのか、どう国際社会の中に入り込んでいくことができるのかを考える、まさに希望開発をする活動である思っています。
行政の取り組み方
 3番目の問題は、行政はどのようにかかわるのかということです。日本ではこれまで平和活動などのイベントは行政がほぼ単独で企画し、そしてかなりの予算をつけて、民間団体を招待すると言うスタイルでした。しかし、これを大きく変えなければならない状況が出てきています。
 まず第1に、自治体自体が予算がなくなって、今までのスタイルがとれなくなってきました。それとともに、肝心の住民にそうした力、タッチエンパワーメントが出ないシステムが日本の中で出てきたということであります。地球市民集会ナガサキが、民間的な発想で、長崎市や県がお金を出すにしても、運営は基本的に民間ベースでやっていくと、まさにこの発想が重要です。平和の問題だけには限りませんが、どこまで市民と自治体とが一緒になってやることができるのか、これが重要だと思います。
 もう一つ重要なポイントは、情報ネットワークのコアです。私は、自治体の役割、職員の役割は何かといえば、これまでは、職員、自治体が中心となって、主役としてイベントをしてきましたが、これからは、自治体の職員は、コーディネーターに徹しかナればいけないと思います。
 最後のポイントになりますが、国際的な連携が、自治体にとって決定的に重要になってくるでしょう。21世紀に入って、グローバリゼーションがますます進んでおります。このグローバリゼーションの負の側面、つまり、弱者が踏みつけられている様子というのも明らかになっています。その中で、民衆の側がそのグローバリゼーションをコントロールできる、民衆の側がグローバリゼーションのコアになることが求められているのが、今の状況であろうと思います。自治体自体が、一つの地域に閉じこもるのではなくて、ネットワークをつくって本格的に、その国際社会の中に入っていくということが求められています。
 そうした活動をする中で、私たち自身が個人としても、あるいは自治体としても希望 を感じることができる、希望をこうしたら作くれると、そして、そのためには、ヒルさんのお話に1人だけでできる、ICANというのがありましたけども、WECANと言うのもあります。つまり、みんなでやるという連帯をどのようにつくっていくのか、これが重要であると思います。
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3)非核の政府を求める会の非核宣言自治体運動の取り組みについて
 非核の政府を求める長崎県民の会事務局長  川口 龍也氏
非核の政府を求める会の発足
 非核の政府を求める会は、結成してから今年で20周年目 になります。20年前の1980年代中頃、 米ソを中心とする核軍拡競争によって、世界には7万発もの核弾頭が配備され、核戟争防止と核兵器廃絶は、緊急な全人類的な課題となりました。この状況を深く憂慮した各界各層の人々と団体によって会は結成されました。会の目標は日本政府の核兵器政策に反対し、国民世論を高め、@核戟争防止、核兵器廃絶の実現A非核三原則の厳守B日本の核戦場化への阻止−などの「非核5項目」を実行する「非核の政府」の実現をめざすことにあります。長崎県民の会の活動一宣言自治体100%をめざし私たちの長崎県民の会は、全国の会結成の翌年に発足し、今年で19年目になります。被爆県の会として「非核5項目」の実現、とりわけ非核自治体運動に力を注いできました。
 当時は、非核宣言をした長崎県下の自治体は80のうち、小浜町などわずか8町しかなく、全国から大きく立ち遅れた状態でした。全自治体非核宣言の実現をめざし、県内自治体を3〜4名のチームで市町村長・議会議長に直接面会して、要請・陳情を繰り返してきました。そして、1999年3月、全自治体の非核宣言が実現しました。
 しかしながらその後、長崎県でも「平成の大合併」実施により、新たに9市1町が誕生し、自治体の数は24に減りました。合併が進行する中で、旧宣言が失効する事態になり、100%から大きく後退しました。
 私たちは、「非核平和行政の空自・後退は一時たりとも許さない」という固い決意のもと、合併前から新「宣言」要請活動を行い、その結果、今年3月31日に生まれた南島原市の市議会が、7月20日に平和都市宣言を可決したので、県内の全自治体非核宣言を回復することができました。

市町村合併と緊縮財政下の平和事業
 一方、「非核宣言」をしたが、市町村合併や財政困難のために、事業ができない、日本非核宣言自治体協議会への加入が認められないという深刻な事態が出ています。その一方で、このような緊縮財政にあっても、「被爆県だから非核平和事業は大切だ」との姿勢で施策の充実などに努力している市町村もあります。
 私たちは、「非核平和行政に関するアンケート」を2000年度から始めました。
 アンケート結果の主な特徴は、@「非核平和」予算については、「予算を計上してい る。一般経費から支出している」を併せて、20自治体(83.88%)。「計上していない」は、4自治体(16,12%)。比率においては、05年度に比べほぼ横ばい。00年度に比べると約5割の前進となります。A具体的な施策については、比率で1位は、「自治体広報紙で平和の啓発活動をしたり、パンフレットを配布したりしている」、12自治体(50,00%)。2位は2つあり、「被爆者から被爆体験や戦争体験の話を聞いている」、「平和の集いを開いてパネル展示(戦争、被爆など)などを行っている」、11自治体、(45,83%)。3位は4つで、「公民館、学校、保育園などと協力して平和教育、平和文化祭などをしている」、「原爆資料館見学や原爆遺跡・碑めぐりをしている」、「日本非核宣言自治体協議会に加入した」などとなっています。
 21項目のうち20項目が、比率において、2000年度に比べて増になっています。全体 では、比率をみる限りにおいて、まだまだ、不十分な点もありますが、一定の前進をしていると思います。
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今、私たちがなすべきこと
 地方自治体の行財政をめぐる状況が非常に厳しくなっており、非核自治体運動は、新たな試練を迎えています。
 今後の課題は、運動する側は、@住民との共同をいっそう広げ、草の根からの運動の発展に尽くすA非核宣言自治体を訪問し、意見交換をおこない、施策の充実などを求めるB非核宣言に留まらないで、「非核条例」化をめざすC全自治体の議会に「核兵器全面禁止・廃絶国際条約の締結促進を求める意見書」の採択を要請する、自治体の側は、@被爆県の自治体として非核平和事業を行政の中心のひとつに位置づけるA非核宣言自治体協議会へ加入し、自治体間の共同を広げるB平和市長会議が提唱している「2020ビジョン」の具体化をはかり、非核自治体独自で、あるいは住民と共同して様々な形態の行動をおこすC非核平和についての重要な問題が起きた場合、ただちに日本政府に対し、住民の立場に立って態度を表明するD世界の非核自治体との交流・連帯をはかる、ことなどがあります。

(4)藤沢市の核兵器廃絶平和都市宣言と平和事業の展開
    藤沢市 青木 明彦氏
核兵器廃絶平和都市宣言
 藤沢市は、核兵器廃絶平和都市宣言、平和基金条例、核兵器廃絶平和推進の基本に関する条例を制定しています。まず 核兵器廃絶平和都市宣言については、1982年6月の第2回国連軍縮特別総会を前に、核兵器廃絶都市宣言の制定を求める7,000名の要望署名が市に提出されるなど世論が高まり、1982年6月21日に、この宣言を市長が提案し、市議会において全会一致で採択されました。
平和基金条例
 この宣言後、平和事業を安定的、継続的に進めるために、基金を設置して、その果実を事業費に充てることとして、1989年(平成元年)2月の市議会に、藤沢市平和基金条例を提案し、可決されました。市では、3年間で4億5,960万円積み立てを行い、1990年からは、基金の果実である利息により平和事業を展開できるようになりました。しかし、最近の低金利により、基金の原資を取り崩しながらの事業展開を余儀なくされているという状況です。
核兵器廃絶平和推進の基本に関する条例
 当市の平和事業は、核兵器廃絶平和都市宣言と平和基金条例によって展開をしてきましたが、1995年、被爆50年の節目に当たる年に、世論が高まり、1994年の12月、条例化を求める陳情が数件提出され、議会にお<いて全会一致で趣旨了承となりました。これを受けて、条例化に向けて、1995年1月学識経験者などにより、条例化検討意見交換会が開催され、この意見を参考に条例案をまとめる作業に入り、1995年2月の議会において提案し、全会一致で可決されました。
平和事業
 長崎市が主催する青少年ピースフォーラム
に毎年40人の小・中・高校生を参加させ、平和の大切さを学んでいます。また、平成 13年から長崎被爆者を招き、市内の小中学校で講話をしていただく被爆体験講話会も実施をしています。このほか、一般市民を対象に、憲法記念市民のつどい、平和資料館などをバスでめぐるピースリングバスツアー、地域の公民館と共催で実施する地域平和事業などを実施しています。これらの平和事業は、公募市民による「平和の輪をひろげる実行委貞会」を組織して、市民と行政が協同で実施するという形をとっています。
国内外の自治体との連携
 国内の自治体間の連携としては、この非核宣言自治体協議会に加盟して、核実験への抗議、研修会への参加、情報交換などを行っており、神奈川県内の非核宣言自治体連絡会議にも参画をしまして、研修会の実施や情報交換を行っています。国外の自治体との連携としましては、平和市長会議の呼びかけに賛同して、昨年5月ニューヨークで開催されたNPT再検討会議へ市長が参加して、核兵器廃絶を求める要望活動などを行ってまいりました。また、昨年8月の広島で開催された平和市長会議総会へも参加しました。当市の平和事業は、先ほど申し上げました公募市民で組織をします「平和の輪をひろげる実行委貞会」との事業が中心ですが、地域の方々との連携も必要であるという観点から、最近では、PTAの方々ですとか青少年育成団体などとも連携して、平和事業に広がりを持たせるように努力をしています。
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4 フロアからの報告
 平和市長会議の国際コーディネーター
アーロン・トビッシュ氏から平和市長会議の活動について平和市長会議が展開しているキャンペーン「2020ビジョン」(2020年までに核兵器廃絶の実現を提唱)について説明し、市長、自治体、NGOの連携の重要性を訴えました。また、会長の秋葉・広島市長の要請で米国市長会議が行った、都市を核攻撃しないよう求める決議を、日本の都市でも決議の採択を推進して欲しいと呼びかけました。京都府宇治市の高橋氏から、会場に配付した資料を基に、市の平和都市宣言(昭和62年)と現在の事業について報告がありました。平和事業は16団体から構成される平和都市推進協議会を中心に行っていること、毎年小中学校それぞれ40人からなる平和訪問団を、広島、長崎、那覇に交互に派遣し次代を担う青少年の平和意識の高揚に努めていることについて説明がありました。


5 質疑応答
 休憩時間中に参加者から提出してもらった質問表をもとに、数名の方から質問を受け、コーディネーターとパネリストがこれに答えました。市民と自治体の協力に関する質問に対しては、市民の側から自治体に学習会や研究会開催を働きかけてはどうか、また自治体としては参加者を動員するのではなく参加型のイベントを心がけるべきでとの回答がありました。
 市民への啓発に関する質問には、オーストラリアの例として、核兵器に関する教材を作ろうとしているが、1980年代にあった核兵器の脅威だけを強調するような資料ではなく、希望とユーモアの要素も取り入れた教材にしたいとの回答がありました。北東アジア非核兵器地帯を推進するために、NGOと市長、非核宣言自治体の連携が必要だと思うが、具体的にどうしたらよいかという質問に対しては、市民の側から自治体に働きかけて、このような運動に取り組んでほしいと要望してもよいのではないかという答えがありました。またニュージーランドにおいては、まず平和団体が各地の自治体に非核宣言を働きかけ、次の段階として国会議員や国に働きかけ、最終的に非核法が制定されたと言う成功例が示されました。このほか、日本の閣僚による核兵器保有容認発言や、国民保護法、全国自治体の2劃しか加入していない非核宣言自治体協議会の現状についての質問もありましたが、時間が無く質問の紹介だけにとどめました。
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6 まとめ
フェリシティ・ヒルさんのコメント  (閉会集会における分科会報告より抜粋)
 この分科会には、NGOと非核宣言自治体がそれぞれの考えと活動計画をについて意見交換するために集まりました。自治体における予算上の制限が非常に現実的な問題として取り上げられましたが、同時に、これまでの長年の活動により自治体が国際的にも影響力を持つアクター(主体者)として認識されてきたことが指摘されました。非核宣言自治体の活動を強化するためについていくつかの提案がありました。その中には国内外のNGOとの更なる連携を進めなければならない、また人に恐怖心を起こし絶望的にさせ時には活動意欲を失わせるような核兵器に対抗する為の私たちの活動に、希望とユーモアを取り入れるべきだ、などの提案がありました。また、非核宣言自治体協議会が日本の全国市長>会に対し、核保有国が都市を攻撃しないように求める決議を行うよう働きかけてほしい旨の提案もありました。

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