「核兵器禁止条約をどう活かすか~ナガサキからのメッセージ~」

【ICAN事務局長ベアトリス・フィン氏を迎えて】
2018.年1月13日(土)午後13時半から16時半、原爆資料館ホールにおいて長崎大学核兵器研究センター(RECNA)主催により、特別市民セミナーが開催された。
「核兵器禁止条約をどう活かすか~ナガサキからのメッセージ~」と題し、昨年、ノーベル平和賞を受賞した核兵器国際キャンペーン(ICAN)事務局長ベアトリス・フィン氏が基調講演した。
フィン氏は、核兵器はこの時代の大きな矛盾であり、長崎は核兵器の矛盾を語るにふさわしい土地と述べ、「日本政府は、誰よりも核兵器の脅威を知っているのに、核の傘の下に甘んじ、抑止力を信じている。広島・長崎の価値観と東京にある日本政府の価値観に大きなギャップがある。国民全員の声を一つにして政府に訴え、日本政府を動かそう。そして、核兵器保有国は、核兵器の保有は力の象徴ではなく、恥ずべき象徴であるということを知るべきである。そして、我々の先には、2つの未来がある。それは、核兵器の終わりを選ぶのか、それとも人類の終わりを選ぶのか」と訴えた。

パネルディスカッションでは、RECNAの鈴木達一郎氏をモデレーターにICAN国際運営委員の川崎哲氏、核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長の朝長万左男氏、外務省から今西靖治氏を加え、活発に意見が交わされた。
川崎氏は、オスロでのノーベル平和賞受賞式の模様を画像を交えて紹介した。また、核抑止力の道徳性や有効性に疑問を呈し、核兵器禁止条約は、北朝鮮と北東アジアの非核化のために活かせる条約であると強調した。
朝長氏は、昨年亡くなった谷口稜曄さんの病床における最後のメッセージを英文の字幕付きで披露し、現在、YouTubeで7か国語による字幕で見ることが出来ると紹介した。医師という立場から放射線によるDNA損傷から白血病や癌の発生について50年に渡り研究していることに触れ、未だに被爆者援護が十分でないと述べた。また、これまでの核兵器廃絶へ向けての歩みを説明した上で、ICANのノーベル平和賞受賞によって今後開始される核廃絶への第二ステージは、より困難な運動になるが、NPT態勢と核兵器禁止条約態勢の融合をはかって、核無き世界の実現を目指すと表明した。
今西氏は、日本政府の立場として、まずは、唯一の被爆国として誰よりも核兵器の非人道性を知る日本は、核兵器禁止条約の目指す核廃絶という目標を共有していると説明したが、一方で、北朝鮮の核・ミサイルの開発は、国際社会の平和と安定に対する重大かつ差し迫った脅威があり、このような環境により日米同盟の下、米国の抑止力の維持が必要と述べた。

質疑応答では、会場から多くの市民の手が上がり、外務省からパネリストとして参加していた今西氏に質問や意見が集中するという、熱い盛り上がりを見せた。
何より、今回の特別市民セミナーは、ICAN事務局長ベアトリス・フィン氏の初の長崎訪問に加え、ノーベル平和賞受賞式から1ヶ月というタイムリーさも手伝って、非常に市民の関心が高く300人以上の来場者を迎えられたことは、核兵器廃絶という未来に光を照らしたように感じた。