分科会3 
「非核兵器地帯と核の傘」

2003年11月23日(日)09:30〜12:00 長崎ブリックホール国際会議場

分和会コーディネーター報告 分科会3:「非核兵器地帯と核の傘」

第1回集会時の同じテーマによる分科会では、核廃絶への道筋のひとつとして、地球上に「非核地帯を創設し、その範囲を広げることが有効」で、特に北東アジアでは、朝鮮半島の2ヶ国と日本を中心に非核地帯を創設し、米ロ中の3核兵器国の計6カ国により非核化協定を結ぶ構想が金子熊夫氏から提案された。しかし、日米・日韓の安全保障条約によるいわゆる「核の傘」が、その協定交渉の足かせになることが海外パネリストから指摘された。
その後3年を経過し、この地域には朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の核武装宣言に端を発して、第1回の6カ国協議に続いて、12月17日には第2回協議が予定されるという緊迫した状況が生まれている。今回の分科会では、はじめて外務省からも小笠原一郎軍備管理軍縮課長が出席し、パネリスト、登録参加者、一般参加者との間で、日本政府の非核3原則を国是とする核政策を巡って、活発な討議が行われた。北東アジア非核地帯構想の実現のための障害と見なされる核の傘政策は、我が国の防衛大綱に明記され、外務省としても米国と共同しつつ、朝鮮半島の非核化を目指す方針であること、しかしこの地域の非核化を目指す基本精神において、我々NGO・自治体の構想と異なるところはないことが小笠原課長から説明された。従って、朝鮮半島の現在の核問題解決と、その後の新たな国際関係の展開を待ちつつ、NGO・自治体主導で非核化構想を条約案の形でまとめる作業を行う重要性が金子熊夫氏によって指摘された。中国のShen Dingli教授は、やはり6カ国協議で朝鮮半島の非核化を実現することがきわめて重要であることを指摘し、さらに中国の視点からみた北東アジアの安全保障は、台湾問題を含む、米国と日本および韓国の軍事同盟による、中国にとっての脅威をいかに解決するかが将来の最重要課標であることを力説した。韓国のKan Jungmin氏は専門的立場から、DPRKの核武装準備状態を分析し、原爆を保有しているとしても、その性能はかなり初歩的なものであり、テポドン等のミサイルによる運搬手段も信頼性にかけ、DPRKの核による威嚇行動はかなり誇張されたものであるとの見解を示した。石栗勉国連アジア太平洋地域軍縮センター長は、冷戦後の核戦略上の空白時に生じた、中央アジア5か国による非核地帯条約締結の条件、特に核保有国の保障をいかに獲得するかなど、北東アジアの非核化の参考となる点を解説し、来年いよいよ協定が結ばれることを明らかにした。またモンゴル1国非核化の成立経緯を報告した。参加者からのパネリストに対する質問は多岐にわたり、北東アジア非核兵器地帯構想の具体的道筋が見えにくい、核の傘から脱却しないまま実現することは困難、しかしNPT体制の危機、CTBTの停滞などの状況下では、やはりその実現に向けて努力する必要がある、外務省の政策決定において米国1国主義をどのように分析しているのか知りたい、生物・化学兵器などの大量破壊兵器の禁止も重要である、等々の質問・議論が行われた。
結論としては、「非核兵器地帯」構想は北東アジアにおいては、現在は実現性に乏しいもの、NGO・自治体を中心にその構想実現のために、関係国のNGO。自治体との信頼醸成につとめ、6カ国協議によってもたらされるであろう朝鮮半島の非核化・対ミサイル対策の新たな展開を受けて、将来提案すべき条約策の準備に入り、それに基づき今後も政府とNGO・自治体の対話を継続して、その実現に努力を払うこととなった。